花のほころびはもう少し?
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 早く光喜に新しい恋をしてもらって、落ち着いて欲しいという気持ちが一番だが、なによりも俺自身がもうちょっとゆっくり二人っきりで過ごしたいと思っている。光喜はしょっちゅう遊びに来るし、それに加えて小津もやってくるようになった。四人で集まるのはそれはそれで楽しくはあるのだが、もっとこうスキンシップを。

「笠原さん、ちょっと飲み過ぎですよ」

「え? ああ、大丈夫大丈夫。このくらい平気」

「でもビール五本目」

「じゃあ、酔っ払ったら冬悟さんが介抱して」

 マンションの裏手にある公園のような緑地。そこに植えられている桜は本当に見事で、休日と言うこともあり花見をしている人も多い。しかし人は多いがあまり周りは他人のことなど気にはしていないだろう。心配そうな顔をする冬悟に乗じて胡座をかいた膝に頭を乗せてごろりと寝転がる。

「これでキスでもしてくれたら最高なんだけど」

「光喜さんみたいなこと言わないでください。やっぱりちょっと酔ってますね」

「んー、なかなかいいアングル。桜と冬悟、絵になるな」

 ポケットから取り出した携帯電話を構えると少し困ったように笑う。それが可愛くて思わずカメラを連写してしまった。男前はどこから見ても男前だな。

「明日も休みだし、今日は冬悟さんのベッドに潜り込むかな」

「え?」

「夜が楽しみだなぁ」

 照れて頬を赤くする顔がめちゃくちゃたまらない気持ちにさせられる。手を伸ばせば少し身を屈めて触れさせてくれた。色づいた頬を撫でると手が重ねられる。そのぬくもりに自然と口の端がニヤニヤと持ち上がった。

「でも今夜はもうひと盛り上がりかな」

「そうですね。修平、頑張っているみたいですし」

「うん、さっきから話が弾んでるっぽいな。この調子ならデートとかこぎ着けられそう?」

 こっちがこうやってイチャイチャしているのに二人は気づく様子もなく話し込んでいる。なんの話をしているかはわからないが、こちらに背を向けている二人は実に楽しそうだ。
 光喜はかなり好き嫌いもはっきりしているし、割と他人に対する警戒心も強い。それでもいまこうして見る感じでは小津に対して好意的であるように思えた。

「組み合わせ的には美女と野獣って感じだけど」

「言い得て妙ですね」

「ちょっと押しが弱いけど頼り甲斐はありそうだよな」

「控えめですけど、ああ見えてしっかりしてますから」

 突っ走って行きがちな光喜には丁度いいのんびりさだよな。いつもだったら酒を飲んで騒いでいるところなのに、大人しくしているんだからなかなかすごいと思う。意外と波長が合ってるのかも?

「お、ちょっと距離を縮めた」

 並んだ肩がほんの少し近づいた。手を握りたそうな雰囲気はあるが、いまはちょっと早いな。でも光喜もけっこう飲んでるし、もうちょい近づいても良さそうなのに。

「笠原さん、見過ぎです」

「ん? ああ、悪い。すごい気になって」

「まあ、その気持ちわかりますが」

 二人の様子に気を取られていたらその気を引くように髪を撫でられた。視線を持ち上げればほんの少し拗ねた顔がある。その顔があまりにも可愛くて、思いきり腕を伸ばして引き寄せてしまった。

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