ゆっくりと熟れていく花の果実
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 いままでとなにが違うんだろう。これまでだってまっすぐに相手のことを好きでいた。その想いに優劣はないと思う。だけど――自分に問いかけてみれば心は正直な答えを導き出す。明らかに違うのは相手から与えられる感情の大きさだ。
 冬悟は俺が想う以上の愛情をくれる。過去の恋はいつでも想いを与えるばかりだった。余裕ぶった態度を見せながらも機嫌を取ることばかり考えて、機嫌を損ねたら振られるんじゃないかと内心ビクビクしていた。
 でもいまはそんな思いをすることがない。

「俺って愛されてるなぁ」

「いま気づいたんですか?」

「ううん、知ってた」

「それは良かったです。……はい、終わりましたよ」

 乾いた髪を指先で整えて、目の前の顔は満足げな笑みを浮かべる。ほんの少し得意気なその顔が可愛くて、気づいたら腕を伸ばして抱きしめていた。
 ほのかに香る石けんの香り。自分と同じシャンプーの香り。それだけで胸が騒ぐ。

「か、笠原さん?」

「なんかすごいムラムラしてきた」

 Tシャツの裾から背中に手を忍ばせたら、大げさなほど身体が跳ねる。さらに身をよじろうとするその身体を押さえ込んでスウェットに手をかけたら、思いきり肩を押し離された。

「そういう気分じゃない?」

「いえ、その、ここではちょっと」

「……ん、そっか。じゃあベッドに行こう。って、ここでさっと抱き上げられたら格好いいんだけど。さすがに無理だから」

 歴代彼氏は身体が小さくて細身だったから抱き上げられたが、冬悟はなにせ俺よりデカい。体格差もあるが、身長差も十センチ以上。
 仕方なしに手を繋げば、少し困ったような顔をする。ちょっと余計なことを言ってしまったかもしれない。

「別に冬悟さんが悪いわけじゃないから、気にするなって。あんまり可愛い顔してるとここで襲うからな」

「すみません」

「謝ったらキス一回。……はい、キスして」

 繋いだ手を引いて顔を上向ければ、しょんぼりしていた冬悟がおずおずと顔を近づけてくる。ゆるりと目を閉じれば柔らかい唇が触れた。すぐに離れようとする気配を感じて握った手に力を込めると、ほんの少し離れた唇がもう一度やんわりと押し当てられる。
 何度も小さなリップ音を立てて触れる唇は次第に熱を持ち始めて、その先を請うように舌先で撫でられた。誘われるままに口を開くと隙間にぬめりを帯びた舌が滑り込む。

「んっ」

 優しく口の中を撫でられてふわふわとした気分になってくる。冬悟のキスはいつも優しくて甘い。唇が離れる頃には唾液が滴って、喉の奥に溜まったそれを甘露のように飲み込む。
 喉元が上下するのをじっと見つめていた冬悟の目にも熱が灯った。

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