My Dear Bear~はじめての恋をしました

52.二人のあいだにあるもの

 好き――その気持ちを早く伝えなくては、そんな想いに駆られるけれど、甘くてトロトロなこの空気を壊すのがもったいなくてなかなか告げられない。好きです、そんな言葉を口にするのがこんなに難しいだなんてこと、いままで光喜は知らなかった。「よし、これ…

51.優しさが溢れる空間

 初めて会った時から小津のもつ優しい空気がいいなと思っていた。ささくれ立つような感情も重たい濁った感情も、甘い蜂蜜の中でとろかしてくれる温かさがある。あの日、あの時、出会っていなければ光喜はいまも苦い恋に囚われたままだった。 あんなに怖かっ…

50.初めての二人の時間

 先日のアクアリウムの時といい、小津はこれまでとは違う一面を見せてくる。いままでは目に見てわかるほどに落ち着きなくあたふたとしていたのに、光喜にはまるで目の前にいる男が別人のように思えた。 けれどそれは嫌な感じではなく、それどころか気持ちが…

49.まっすぐな優しい眼差し

 もうやめてくれと言い募る光喜を無視して晴は小津にあれこれと吹き込み始める。去年くらいのものであれば電子書籍でバックナンバーが見られるだろうと、光喜が載っている雑誌を事細かに教えたり、先日の撮影のことを教えたり。 そんな晴に対し小津は興味津…

48.その瞳に映る自分

 目の前に戻ってきた小津の気配を感じたが、光喜はいつまで経っても顔を上げられない。まっすぐに視線を向けられていて、訝しく思われているのも感じる。けれど心の中は焦りばかりで、身体が思うように動いてくれなかった。「光喜くん、どうしたの? 具合悪…

47.どうしても届かない理想

 まるで徒競走のような足取りで、十五分はかかる距離を十分ちょっとでたどり着く。散々晴にまとわりつかれて光喜はうんざりしていた。けれど玄関の前に立ちチャイムに指を伸ばすと、やけに胸がドキドキとする。 少しだけ待つと扉がゆっくりと開き、いつもと…

46.あの人に少しでも近づけたなら

 予想外の誘いだったが小津のおかげでうまく話を持ちかけるきっかけができた。とんでもない言い訳を考える羽目にならなくて良かったと光喜は息を吐く。しかし少し嘘をついてしまったことに後ろめたさがある。 もっとあの人の前ではありのままの自分でありた…

45.グッドタイミング

 積極的になりきれないのははっきりと言葉にしてもらえない不安と、小津の好みからかけ離れているという不安。もし本当に想いを寄せられていても、自分好みの相手が現れたら気持ちが移ろいでしまうのではないかと思ってしまう。 いままで周りにいなかったタ…

44.どうしても拭えない不安

 朝目が覚めた時、光喜はひどく後悔するような気持ちに支配された。尊いと思えるくらい優しいあの人を汚してしまったような罪悪感。それでも昨夜のことを思い出すと顔が火照る。 心の内が複雑になるくらい申し訳なさが募るものの、あの時に感じた高揚感と疼…

43.初めての体験※

 まさかこんなものを持ち帰る羽目になるとは数時間前の自分は想像もしていない。電車に乗っているあいだずっと、ビニール袋が透けて見えるわけでもないのに、それを持ってる自分に光喜はひどく恥ずかしい気分になった。 いくらなんでもこれは飛躍し過ぎでは…