My Dear Bear~はじめての恋をしました

12.混ざり合う行き場のない感情

 新しい出逢いへと目を向けさせようとするのは、二人の真の優しさから来るものだ。女の子に最近トキメキを感じないとぼやいていた光喜に、この男ならきっと大丈夫だと、そう思って紹介したのも想像が容易い。週に一、二度は顔を合わせるので今日で会うのは六…

11.蜘蛛の糸みたいな想い

 一生懸命に心の内を覗こうとする眼差し。言葉の真偽を確かめようとするまっすぐな瞳。端から見れば、彼の優しさはなんて残酷だろうと思うかもしれない。固く結び合った赤い糸にまとわりつく糸を断ち切らないままでいること。 けれどその優しさは勝利のまっ…

10.理性と本能の狭間で

 二人で電車に駆け込んでからもしばらく手は離れなかった。けれどふと我に返った勝利にもの言いたげに見つめられて、光喜はごめんごめんと軽く笑いながら手を離した。混雑した電車の中で手を繋いでいたって誰も気づきはしないのに、そう思うものの、彼は自分…

09.君と過ごすひと時

 事前に勝利がチェックしていた店を渡り歩いて、一時間と少しかかったが二人は満足行くものを購入することができた。メタルのシンプルなカードケースだけれど、表面がさらっとした加工で指紋がつきにくく扱いやすい。 小津の大きな手でも無難に使えるだろう…

08.新しい恋へのステップはまだ先

 恋を忘れるためには新しい恋が一番だ。そんなことを言ったのは誰だっただろう。しかし恋をするための教本は書店のあちこちで見かけるけれど、いまの光喜にはどれも役に立ちそうがない。なぜなら小津との新しい恋よりも、いまもまだ勝利との恋がしたいと思っ…

07.ほんの小さなひと時

 小津と二人で静かな道をゆっくりと並んで歩く。毎日せかせかと足早に通り過ぎていた道が、なんだか今日は普段と違って見えた。見慣れていたはずのものが初めて目に映すみたいな発見をする。それと同時にいつも下を向いて歩いていたんだと初めて気がついた。…

06.胸の傷に染み込む想い

 いつもだったら光喜はこんなに引きずるような恋はしない。パチンパチンとスイッチが切れて気持ちが切り替わる。それなのにいつまで経ってもスイッチは音を立てない。それどころか想いとは裏腹に心は先へ進みたがる。 どうしたらこの気持ちに区切りが付けら…

05.進み続ける二人の時間

 胸に溜まる想いを押し流すようにビールを身体に流し込む。三杯目のジョッキをテーブルに戻すと、光喜は勝利の顔を見つめた。テーブルの奥には注文用の機械が置いてある。それを指させば目の前の顔が少し歪む。「生ビールおかわり!」「おい光喜、ペース速い…

04.用意された舞台の上で

 最初は告白してきた相手を振る方法、それを勝利は光喜に相談してきた。イケメンだけどものすごくストーカーみたいな男に告白されて困っている、そんな内容。小中高と一緒だった二人はそれぞれ違う大学に入って離れてしまったが、二年近く疎遠になっていたに…

03.片想いの行方

 道すがら騒ぎながら四人で店に着くと、予約をしていた席に通される。身体の大きな小津に考慮してソファの六人掛けテーブル席。奥に勝利と鶴橋が向かい合わせに座り、手前に光喜と小津が座る。頼んだ生ビールが届くととりあえずお疲れさまとジョッキを合わせ…