18.抗えない言葉※

 着ていた衣服をベッドの下へ放り綺麗な身体を見下ろすと、恥じらうように目を伏せる表情がよく見えた。いつもの寝室は間接照明のほの明るい灯りだが、いまは蛍光灯の下で隅々までよく見える。
 それに気づいた光喜が電気消して、と呟くが、小津は笑みを浮かべて聞き流した。その意地悪い反応に少しふて腐れた顔をして彼は長い脚で引き離すように肩を押してくる。けれどその脚を捕まえた小津はそこにキスをして舌を這わせた。

「ねぇ、小津、さん。そんなにしたら、俺、溶けちゃうよ」

 ふくらはぎ、足首、足の甲、指先――余すことなく舌で撫で上げると、わずかに震える声が聞こえてくる。肌を伝い太ももまでたどり着く頃には、反り返った熱からこぼれた蜜で繁みからその奥までびしょ濡れになっていた。
 それでもやめることはせずにさらに上へと辿っていく。刺激を待ち望む場所を通り過ぎ、付け根を撫でた時には身体がビクビクと跳ね上がった。ぐずつきだした声で早く、とねだられるけれど、ぷっくりと膨らんだ胸の先を舌先で弾くと小さな甘い声に変わる。

「そこ、駄目、すぐイッちゃうからっ、……んんっ」

 上擦った声が響きそうになると、両手で口を塞いで身体をくねらせる。それでも隙間から漏れてくる声は熱に浮かされたように甘ったるい。そして刺激を逃そうとしているのか、足をジタバタとしてシーツの上で打ち震える。

「あっんっ、小津さん、もう、いいから、早く挿れて」

「いいよ、イッても」

「駄目、だってまだ小津さん、イってないじゃん。俺ばっか、駄目……んっ」

 可愛いことを言う恋人に痛いくらいに硬くなったものが疼く。いますぐに突っ込んで揺さぶりたくなるが、ふっと息をついてから小津はまた胸の尖りを刺激する。指先でつまんでこねると光喜の腰が揺れた。
 腹に押しつけて自慰をするみたいに揺らされる腰がひどくいやらしい。けれど本人はおそらく無意識なのだろう。顔を真っ赤にしながら涙を浮かべて指を噛む。もう片方を口に含んできつく吸いつきながら、反対側を指先でもてあそぶと喉をさらしてのけ反った。

「やだ、イっちゃう、だ、め、……っ」

 とっさに声を飲み込んだ光喜は身体を震わせて欲を吐き出す。余韻が続いているのか涙が浮かんだ瞳がぼんやりとしていた。そっと身体のラインを撫でるとピクリと肩が揺れ、瞬きをした熱っぽい眼差しが向けられる。

「もう、俺ばっかり」

「気持ち良くなかった?」

「……き、気持ち良かった。でも、それより小津さんが欲しい」

「昨日もいっぱいしたのに」

「う、それは、そうだけど。……駄目、なの?」

「んー、そんなに可愛い顔でおねだりされたら、駄目なんて言えないよ。でもイキっぱなしで辛くない?」

「平気、俺は頑丈だから。いますぐ、欲しい」

 子供が抱っこをせがむみたいに両手を伸ばした光喜に自然と笑みが浮かぶ。ぎゅっと身体を抱きしめて、キスを交わしてからそっとぬかるんだ場所に指を這わせる。それだけで期待をするようにヒクつくそこは、張り詰めた熱を飲み込んだ。

 いつもなら気持ちが暴走して激しく揺さぶってしまうところだが、あまり動くとベッドが軋んでしまう。正常位でゆっくりと抜き挿しを繰り返して彼の快感を引き出していく。初めての時から感じやすかった身体だけれど、身体を重ねる回数が増えるほどに淫らに小津を煽ってくる。
 普段の青年らしい表情とは違うその姿に、理性のリミッターが壊れるなんてことはしょっちゅうだ。

「……はあ、なんか、いつもよりゾクゾクする。小津さん、気持ちいい?」

「うん、すごくいいよ。光喜くんの中、すごい熱くて」

「あっ、小津さんのも、すごいビクンビクンてしてて、気持ちいい」

 腹の奥の熱を確かめるみたいに下腹を撫でるうっとりとした顔にさらにズクンと熱が疼く。けれどそれを感じて、おっきくなった、と子供みたいに笑う姿に肩の力が抜ける。しかしすぐにもっと、とねだる彼は妖艶さを滲ませた。
 ラジオの雑音に混じる光喜の声はひどく甘やかで、それをずっと聞いていたいような気持ちになる。時折視線を持ち上げて熱を帯びた目を向けられて、さらに奥へと誘われた。

「ぁっ、ん……もうイク」

 吐き出す呼気が少しずつ荒くなると、刺激をねだるように両脚が腰へと回される。引き寄せられるままに近づいて赤く色づいた唇を塞げば、口を開いて光喜はその先を請うてきた。望むままに熱い口の中をたっぷりと撫で一番感じる場所に猛るものを押しつける。
 すると限界が来たのか足先が伸びてシーツの上にしわを作る。溢れ出した涙が彼の頬を伝い、伸ばされた手できつく背中を抱きしめられた。

「光喜くん、大丈夫?」

 ドライで達した光喜はまだ続いているのだろう快感をこらえるように指先に力を込める。爪の先で引っ掻かれる場所がヒリヒリと痛むが、落ち着くまで小津は耳元や首筋にキスをした。しばらくそうしていると力が抜けて彼の腕がはらりとベッドの上に投げ出される。
 それを見計らってゆっくりと萎えたものを抜けば、それだけでも刺激になったのか小さな声がこぼれた。

「ん、……ごめん、小津さん。もう力入んない」

「うん、いいよ。寝ちゃっても平気だよ」

 くたりとした光喜の頬を撫でて額に口づけると、ゴムを外して床に放りっぱなしのタオルで汗ばんだ身体を拭いていく。されるがままに小津に身を預けながら、彼は重たいまぶたを瞬かせる。とろんとしているそれはもう落ちる寸前だ。
 けれど必死に眠気と戦っているのか何度もパチパチと瞬く。その幼い子供みたいな仕草に小津は口元を緩めてしまう。あやすように髪を撫で梳いてあげれば、こらえきれなくなったまぶたはしっかりと閉じられた。