しあわせのカタチ

コイゴコロ05

 腰を動かすたびに、ギシギシと二人分の重みを載せたベッドが軋む。 冷えた空気の中でも、汗が滴り肌の上を滑り落ちていく。吐き出す息は熱くて、頬も紅潮して火照っている。 しかしそれ以上に身体が燃えるように熱くて、突き抜けるような快感に腰を振るの…

コイゴコロ04

 シャワーが流れっぱなしの、湯気が立ち上る風呂場で、ねちっこいキスをする。 唾液を拭うのも忘れてひたすら舌を絡ませた。身体の熱が高まって、口の中まで溶けそうなくらい熱い。 撫でられるたびに、ゾクゾクとした痺れが駆け抜けて、だらだらとしずくを…

コイゴコロ03

 苺のショートケーキを、大雑把にフォークで突き合って、半分くらい平らげて、スパークリングワインを二人で一本空けた。 それほど度数の高いものではなかったので、ほんの少し酔いを感じるくらい。 しかしいい気分で風呂に入ろうと思ったら、長湯はしない…

コイゴコロ02

 駅前で瑛冶と合流すると、そこからほど近いスーパーに二人で寄った。しかし今日は鍋焼きうどんにすると言っていたので、それほど買うものは多くない。 うどんとそれに入れる具。 瑛冶が作る鍋焼きうどんはすき焼き風なので、長ネギと牛肉と焼き豆腐と卵、…

コイゴコロ01

 仕事の業種が違えば、相手と休みが被るなんてことは少ないだろう。サービス業とオフィスワークともなると、ほとんど合わない。 けれど最近になって、月に一度くらい向こうが休みを合わせてくるようになった。 休日が一番忙しい仕事だと言うのに。 しかし…

デキアイ05

 広海先輩はなにも言わずに、黙々と足を進める。次第に駅に向かう道から少しそれた。 そのまま静かな住宅街を抜けて行くと、ふいに鮮やかな色彩が目に飛び込んでくる。 突然目の前に広がったのは、銀杏と紅葉の色づき。背の高い木々に赤や黄色の葉っぱが生…

デキアイ04

 一体どこまで本気なのか。それがよくわからなくてあからさまに警戒をしてしまう。 広海先輩に気があるとか、俺なんかを可愛いとか言うその人は、あっけらかんとしているけど笑うとやっぱりうさんくさい。 でもおどけたふりをしているが、多分思うよりもず…

デキアイ03

 広海先輩は物事に対して、きっぱりはっきりした性格だ。 まどろっこしいことは嫌いで、日本人にしては珍しくイエスとノーもためらわない。 でも俺との関係は、そんな中では曖昧なものだったんじゃないかと思う。 だから彼は自分と俺との関係について、は…

デキアイ02

 気持ちの底のほうに刺さっていた棘がなくなり、気持ちもすっかり上向いた。 終始俯きがちだった城戸さんも最後には笑ってくれたし、やっと一段落した感じがする。 この先のことを考えれば、ギクシャクしたままじゃお互いに仕事もしにくかっただろう。 ど…

デキアイ01

 最近は季節が移り変わるのが早い。 大人になると時の流れが速くなる、というのは本当だと思う。暮れが近づくと、それを日増しに感じるようになる。 いつでもうちの店は忙しくて、暇だなんて思ったことは一度もないが、イベントごとがある月は一段と慌ただ…