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愛をなくした大公は精霊の子に溺愛される

第34話 交わり合う身体

 静けさ漂う室内には、ロディアスの荒い息づかいと、粘り気を帯びた水音だけが響く。
 丹念に体の奥を開かれ、よいところを見つけたリュミザの指に、そこばかりを撫でられる。

「ぁっあっ、リュミィっ、また、く!」

 指だけでどれだけ達したかわからないほどで、ロディアスは快感の波に落とされたまま上がってこられずにいた。
 四つん這いになり、腰を高く上げた姿は雌猫のようだ。

「ふぁっ、もう、いい。……早く! あっぁぁっ」

 いまは指が出入りするだけでも感じる。リュミザの選んだ小瓶は、媚薬入りのものだったのかもしれない。
 行為が初めての相手に使うと、痛みを感じにくくする。

 だが冷静にそんなことを考えている余裕は、ロディアスになく、リュミザに与えられる快感で体を震わせるばかりだった。

「可愛いですね。あなたのとろけた表情。ずっと見ていたい。ゾクゾクします。僕のがほしいですか? ロディー」

 横顔を覗き込んでくる若葉色の瞳は、いつもより濃い色合いに見える。リュミザも興奮を覚えているのは気づいていた。
 時折ロディアスの尻の割れ目に押し当て、リュミザはそこで何度か精を吐き出している。

「早く、挿れてくれ! もう、我慢、できない」

 散々慣らされた場所は、リュミザの大きく昂ぶっているモノを押し込まれたくなっている。
 ロディアスは振り向いて、リュミザの瞳を見つめると、何度も「ほしい」と懇願した。

「無理をさせないようにと、気を使っているのに、あなたにほだされてしまう」

「――っ、ぁあ……ん――っ」

 ほぐされた場所へぐっと押し込まれた昂ぶりは、想像よりも太くて長い。みっちりと中を埋め尽くされ、奥で主張する感覚が触れなくともわかるほどだ。
 満たされた瞬間、ロディアスはまた達していた。

「はあ、すごい。なんて気持ちがいいんだろう。ふふっ、ロディー、達してしまったんですね? 可愛くて仕方がない」

「んぁっ、いいっ、リュミィ、もっと」

「中を擦られるのが気持ちいいんですね?」

 ゆっくり、ゆっくりと抽挿を繰り返され、ロディアスはきつくシーツを掴む。
 こらえていないとあまりのよさに、あられもない声を上げてしまいそうだった。

「あ……ぅっ、んんっ」

「ロディー、唇を噛むと傷つきますよ?」

「だっ、だめ、だ……っ、ひっぁっあっ」

 声を我慢しているのを悟ったリュミザは、ロディアスの腰を鷲掴み、大きく腰を揺らし始めた。
 ガツガツと激しく、奥を突かれるたびロディアスの声が口から漏れる。

「リュミィ、だめ、だ。また――っ」

「中に、出しますね」

「はっ、ぁ――んっ、熱い。腹の奥が」

「ロディー、もっとたくさん、注いでもいいですよね?」

 中に注がれ、達したロディアスは肩で大きく息をする。
 けれどリュミザのほうはまだ満足していないのだろう。すぐに腹の中で主張し出した。

「いい、いいけど――そんなに激しく――っ!」

 ロディアスとてやぶさかではない。ないのだが――脚を掴まれ、ベッドへ転がされた瞬間、また律動が再開されて喘ぐしかできなくなる。

(リュミザも、よさそうな顔をしてる)

 体勢が変わるとリュミザの表情がよく見えた。
 行為に夢中な彼の顔を見ているだけで、制止する気も起きなくなってくる。

 そもそも命を分かち合うためには、深く交わり合う必要があるのだ。
 これまでどういった原理なのかはわからなかったけれど、体液に魔力が多く含まれていることを鑑みれば、循環による効果だろう。

「ロディー?」

 じっとロディアスが見つめていると、リュミザは訝しげな顔をする。よくないのではと思ったに違いない。
 ロディアスとしてはよすぎるくらいだというのに。

「リュミザ、もっとこっちへ来てくれ」

「どうしたんですか?」

「口づけがしたい」

 繋がり合っているのもよいけれど、ロディアスはほかのものがほしくて手を伸ばした。

「唇が寂しい」

「とても可愛いおねだりですね」

 ロディアスの素直な言葉にリュミザはふっと表情をほころばせる。
 身を屈め、ゆっくりと覆い被さってくる彼を、ロディアスは両手で抱きしめた。強く抱きしめるほどに、リュミザはロディアスの口内をたっぷりと唾液で満たす。

「リュミザの唾液は甘い」

「魔力の相性がいいのでしょうかね?」

「はっ、んっ……もっとほしい」

 ねだるようにロディアスが引き寄せると、リュミザは口の中を優しく愛撫してくれる。
 滴る唾液を啜りながら、ロディアスはさらに舌先を伸ばして、リュミザにせがんだ。

「もっと、リュミザ」

「ロディー、また動いてもいいですか? 口づけもちゃんとしてあげますから」

「ん、好きにしろ」

 深い口づけと、ゆるりとした動きで、またロディアスは快感の波にのまれていく。
 上と下とで受け入れるリュミザの魔力が、体中に浸透して、めまいを起こしそうなほど心地いい。

(すごく……いい。これまで経験したことのない感覚だ。少しずつリュミザとのあいだに、繋がりが生まれるような)

「ロディー、大丈夫ですか?」

「……大丈夫じゃ、ない。よすぎて、馬鹿になりそうだ」

「そんなに蕩けた顔をして、僕の理性を試しているんですね」

「試されてるのは、俺だ」

 ゆるゆるとした動きから、再びよい場所へと刺激を与える動きに変わり、ロディアスは自身の指を噛む。
 しかしそれでもこらえきれず、唇の隙間から、ふー、ふーと獣のような声が漏れているのがわかる。

「ロディーは観念して、気持ちいいって言ってください」

「いいよ、きもち、いい。あんたに抱かれてると思うと、興奮する」

「今夜は、抱き潰しますね」

「……望むところだ」

 ぷつんとリュミザの中でなにかが切れた気がする。
 乱暴ではないけれど衝動的に、ロディアスの体を揺さぶりだした。彼に火を付けられるのは自分だけ、そう考えるとロディアスはさらに気持ちが高揚する。

「ロディーの体力が回復したら、この体にまた筋肉がつき始めますね」

「うかうかしていると、あんたより体格がよくなるぞ」

「それは由々しき問題です。でも格好いいロディーもいいですね」

 ロディアスの脇腹を撫でながら、リュミザはうっとりとした顔をする。
 触れられているほうは、こそばゆさとぞくりとした感覚が交互にやって来て、黙っていられない。

 ロディアスが身をよじると、身を屈めたリュミザが肌に口づけし始めた。

「んっ、あとをいくつ残すつもりだ」

「いくつでも、僕のものって感じがして気分がいいです」

 ちゅっちゅと音を立て、ロディアスの肌へ赤い印を残していくリュミザは楽しげだ。

(そういえば以前、首へ残したあと……見られているな)

 従者に肌を見られることは気恥ずかしくないものの、リュミザの残した独占欲の印を見られるのは、さすがに羞恥が湧く。
 船の一件では、目覚めたら屋敷だった。もう随分前の話ゆえ、いまさらではあるが。

「こんなにつけたんだから、あんたが世話しろよ。リュミザ」

「ふふっ、任せてください。では今夜は責任を持って最後まで、ロディーをよくしてあげます」

「んぁ――っ、急に、動くなっ」

 散々肌に口づけ撫で回したあと、リュミザは再び腰を揺らし始める。気を抜いていたロディアスは、ふいをつかれて甘い声を漏らしてしまった。
 中を舐るようにされれば、こらえきれずに上擦った声が響く。

 甘やかな声を出してしまうたび、リュミザは恍惚とした笑みを浮かべた。

「ロディー、愛してます」

「俺も、だ」

 ロディアスが両手を伸ばし、リュミザの首元へ絡めれば、彼は横たわる体を抱き寄せ、膝の上へと導いてくれた。
 体勢が変わり下から突き上げられる感覚に、ロディアスは何度目かの精を吐き出す。

 互いに貪り合い、二人が疲れ果てたのは夜が更けた頃だろうか。

 体は気だるく体力も残らぬほどだったが、確かに自身の中にリュミザの気配が感じられ、ロディアスはほっとした気持ちになる。
 二人のあいだに見えない絆が作られた。

 誓約のない、二人だけの繋がりだ。
 たとえ誓約があろうとも、ロディアスがリュミザを手放すなどありえないけれど。

「ねぇ、ロディー、世界一周旅行が楽しみですね」

「そうだな。すぐにとは行かないが、少しずつ準備しよう」

「ハンスレットへはたまに帰りましょう。みんなが寂しがります」

 ベッドの上で二人抱きしめ合いながら、微睡む。
 湯浴みもしたいけれど、いまは互いにこうしているのが落ち着くので、汚れたシーツは足で床へと蹴り落とした。

「ふふっ、ロディー、足癖が悪い人みたい」

「いまは少しも動きたくない」

「僕もです。満たされた気持ちで、いっときも離れたくありません」

「今日は誰も起こしに来ないだろう」

 火照りが収まった体を冷やさないように毛布を引き寄せる。
 二人で一緒にくるまれば、ぬくもりがじわりと拡がっていった。

「リュミザの髪、やはり綺麗だな」

「そう言ってもらえてうれしいです。会うまで本当に不安だったんですよ」

「いいじゃないか。白銀色、似合うぞ」

 枕に散った髪をロディアスが指ですくうと、リュミザはくすぐったそうに笑った。
 煌めく髪は光を集めたみたいにキラキラと輝いて見える。

「髪は伸びるのか?」

 短くなってしまったので、指先からすぐに滑り落ちてしまうのが残念に思えた。
 ロディアスが問いかけたら、リュミザは驚いた様子で目を瞬かせる。

「長いほうが好きですか?」

「そうだな、どちらかと言えば」

「いますぐ伸ばせますけど」

「……徐々にでいい」

 いくら人の器を捨てたとは言え、いきなり伸びるのは周りが戸惑う。
 躊躇なく止めると、リュミザも察してくれたようだった。

「伸びたらまた編んでください」

「そうだな」

「ロディー、好きです」

「俺もあんたが好きだよ。リュミザ」

「ふふっ」

「眠いのだろう? これからの話はいつでもできる」

「はい」

 ウトウトとするリュミザは長いまつげを瞬かせながら微笑む。
 髪を撫でてやれば、まぶたがゆるりと閉じられ、ロディアスもつられるようにあくびをした。

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