77.好奇心と言う名の欲※

 静まった部屋の中にぬちぬちと粘るような水音と荒い光喜の呼気が響く。さすがに同じ男だけあって感じる場所を熟知している。ゆっくりゆっくりと高みへ押し上げられるような感覚。一気に達してしまいたい気持ちとこの快感をずっと味わっていた気持ちがせめぎ合う。

「はあ、んっ、……あっ、いい、小津さん、もっと」

「もうすごいドロドロだね。イキたい?」

「まだ、もうちょっと。……んっ」

 熱く湿った息を吐いているとふいに唇を塞がれる。そして口の中を優しく撫でられて、それだけで快感が増していく。身体中に広がる疼きに光喜が身体をくねらせると、唇が離れてじっと目をのぞき込まれた。

「やだ、あんまり見ないで、は、恥ずかしい」

「大丈夫だよ、すごく可愛い」

「駄目、駄目だってば、そんなに見られたらイキそう」

「いいよ、イッても。可愛い顔、もっと見せて」

「あっ、駄目!」

 耳元に囁かれて、蜜をこぼす入り口をこじ開けられるとビクビクと身体が震えて欲が吐き出される。しかし昨日の夜に散々出したせいかそれはこぽりと溢れ出す程度。それでも感じた気持ち良さはいままでの比ではない。
 それと共に尻の奥が疼き出して光喜は視線をさ迷わせる。どうしようかとためらいの気持ちが湧くけれど、後ろを向いてテーブルの上にあるティッシュの箱に手を伸ばした小津のシャツを思わず捕まえてしまう。その手に振り向いた彼は小さく首を傾げた。

「身体、平気?」

「う、うん」

「シャワー浴びる? 昨日の夜もかなり汗掻いちゃったし」

「あ、あの、小津さん」

「ん?」

「えっと、その、後ろも、いじって欲しい」

 ぼそぼそと呟いた光喜の言葉に、小津は瞬きを忘れたかのように固まった。その顔を見た瞬間、光喜はサァっと血の気が下がるような気分になる。告白されて返事をして、尊い雰囲気から一気にエロい展開へ流してしまった自分の奔放さで自己嫌悪に陥った。
 いままで慎ましい感じの人としか付き合っていないのなら、こんな性欲にまみれた相手はきっと初めてだろう。正直言えば自分でも呆れてしまう。いままでも光喜はそれなりに性欲はあったけれど、ここまで貪欲ではなかった。

「ご、ごめん! な、なんでもない」

「……あっ、ちょっとびっくりしただけだよ。昨日いっぱいしちゃったし、痛みとかはない?」

「な、ない。小津さんが、ローションたっぷり使ってくれたから、全然平気」

 顔を茹で上がらせて首を振った光喜に、ようやく瞬きをした小津は慌てたように身体を抱き寄せてくれる。優しく背中を撫でて頬を寄せられると、光喜はじわりと涙を浮かび上がらせた。

「いやらしくて、ごめん。いま猛烈に反省してます。こういうの、なんて言うんだっけ? ……ビッチ?」

「いや、光喜くんはそういうのと違うと思うよ。いまは好奇心が旺盛なんじゃないかな?」

「好奇心、物珍しい感じ? でもなんかそれ小津さんに失礼な気がする」

「そんなことないよ。素直な光喜くんは可愛くて、僕は好きだよ。ローションなくても大丈夫かな。だいぶ先走りでびしょびしょだ」

「あっ」

 指先でフチをゆるゆると撫でられて身体がひどく期待する。ゆっくりと指を挿し込まれるとそれだけで感情が振り切れそうになった。中は残っているローションのおかげなのか、痛みもなくスムーズだ。
 確かめるように中を撫でながら指を増やされて、上擦った声を上げてしまう。けれど涙目になった光喜の瞳を小津はやんわりと目を細めて見つめる。声を漏らすたびに愛おしそうに見つめられると、それだけで疼きが増す。

「ねぇ、小津さんの、欲しい」

「え? ……駄目だよ。さすがにそれは。少し腫れてる感じがある。指だけで我慢して、また今度してあげるから」

 なだめすかすようにまぶたに口づけられて、そっと感じる場所を撫でられるとビクンと光喜の身体が跳ねる。それは触れるか触れないか、羽のような感触なのに身体に走る刺激は強烈だった。
 切羽詰まった声を上げて善がる光喜は腕を伸ばして小津の背中を抱き込んだ。ソファに背中を預けている状態では不安定で腰を揺らすこともできない。そんなもどかしい思いをしてる光喜を察したのか、小津は快感に落とし込むように刺激を強くした。

「あっ、あっ、なんかくる、や、小津さんっ」

「大丈夫だよ」

「ぅんっ、ぁっ、あぁっ、ぞわぞわするっ、やあぁっん」

 込み上がってくるような感覚が身体中に広がって、背筋を走り抜けるほどの快感が突き抜けた。ビクビクと身体をヒクつかせた光喜の瞳からボロボロと涙がこぼれる。

「これだけですぐイケるなんて、光喜くんは敏感なんだね」

「……い、いまの、なんか、すごかった。まだ奥がじんじんしてる」

「気持ち良かった?」

「う、うん」

 目尻の涙を唇で拭われるだけで肌がざわめく。触れられるだけでぞくぞくとして、肩を震わせてしまう。初めての感覚に頭が追いついていない光喜は頼りなげな目で小津を見つめた。
 その視線に小津はふっと笑みをこぼすと、なだめすかすように何度もキスをくれる。蜂蜜みたいな甘いキス。夢幻じゃない、確かにそこにいる愛おしい人を光喜はきつく抱きしめた。